世界の雇用及び社会の見通し 動向編 2025
更新日:2025/07/29
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・ 序文、目次、エグゼクティブ・サマリー
概要
見出しで示される雇用に関する指標は堅調さを示している.しかし,このような堅調さは,根強く続くグローバルな労働市場における構造的な弱さを覆い隠している.失業率は歴史的に低い水準で安定しているものの,インフォーマルな雇用,ジェンダー間の格差,そして就労貧困は,パンデミック以前のトレンドに復帰して以降,わずかにのみ改善している,あるいは改善を示していない.ヨーロッパやアジアの主要な経済国の市場においては,製造業や高付加価値型サービス業への構造転換が減速しているという状況の中で,生産性の伸びが低調であることも,最近のインフレ期に被った損失から実質可処分所得が回復することを阻害している.かつては経済成長と生産的雇用の原動力であった製造業は,長引く停滞期間を経験しており,このことは,国の内部,および各国の間の両面において,地域間不平等を悪化させている.現行の動向に基づくと,2030 年までにディーセント・ワークがベースラインである2015 年の値からさらに改善することは期待できない.
本年の『世界の雇用及び社会の見通し:動向編』は,進展しつつあるグローバルな経済の転換と並んで,労働市場における構造的不均衡に関する包括的評価を提示している.本書は,世界全体の傾向,地域別の相違,そして労働者のさまざまなグループの全体における成果を分析している.このレポートにおいて初めて,分析の対象に選ばれた国について,下位国家レベルの動向が提供されている.本レポートは2025 年と26 年の労働市場に関する予測も提示している.さらに本書は,労働力参加,雇用増加,およびインフォーマル雇用に関する動向を提示し,そして構造的な労働市場の欠点に対するそれらの寄与度を分析している.
目次
序 文
謝 辞
エグゼクティブ・サマリー:雇用の回復から,回レジリエンス復力の持続へ
1 回復から回復力の持続へ?
力強さに欠ける成長は労働市場に試練を与えている
見出しの良好な雇用データは構造的な脆弱性を隠している
見通し:不確実性が構造変化を遅らせている
参考文献
2 地域別の雇用及び社会の動向
アフリカ
北アフリカの労働市場動向
サハラ以南アフリカの労働市場動向
民間資本移動の一形態としての送金をフォーマル化し,強化する
南北アメリカ
ラテンアメリカ・カリブの労働市場の動向
北アメリカの労働市場動向
気候に関連するリスクとカリブ地域の観光産業
アラブ諸国
アラブ諸国の労働市場動向
人口知能やデジタル技術の採用とジェンダー間の格差の拡大
アジア・太平洋
アジア・太平洋地域における労働市場動向
さまざまなディーセント・ワーク不足の全体での改善は停滞している
移行,および移行が雇用の創出と破壊に対して持つ意味
ヨーロッパ・中央アジア
ヨーロッパ・中央アジアの労働市場動向
EU では生産性の上昇が遅いことが実質賃金上昇の足枷になると予想されている
参考文献
3 生産的雇用と地域間の不平等
生産性は地域間の不平等の拡大を背景に増加は減速している
構造転換の性質と生産性
地域間不平等と構造変化
プラスの波及効果
参考文献
補遺.データの出所と方法論
著者紹介
国際労働機関(ILO:International Labor Organization)
ILOは1919年に,ベルサイユ条約によって国際連盟と共に誕生した.第1次世界大戦後の社会改革に対して高まる懸念,そしてあらゆる改革は国際的なレベルで進められるべきだという確信を体現するものとして設立された.
第2次世界大戦後,フィラデルフィア宣言によってILOの基本目標と基本原則が拡大され,力強く再確認された.宣言は戦後における独立国家数の増大を予見し,大規模な対途上国技術協力活動の開始を明言した.1946年,ILOは新たに設立された国際連合と協定を結んだ最初の専門機関となり,創立50周年にあたる1969年にはノーベル平和賞を受賞した.
訳者紹介
田村 勝省(たむら かつよし)
東京外国語大学および東京都立大学卒業.
旧東京銀行および関東学園大学教授を経て翻訳家.