マクミラン経済学者列伝 シュンペーター

更新日:2016/06/01

マクミラン経済学者列伝 シュンペーター

社会および経済の発展理論

エスベン・スロス・アンデルセン 著

小谷野 俊夫 訳

2016年6月 発行

定価 2,500円

ISBN:978-4-907600-43-3

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・  序文、目次

概要

シュンペーターの業績は,「革新(イノベーション)」や「創造的破壊」というキーワードとともに,よく知られるようになっている.そして実際に,そういった概念を最近の経済や企業の盛衰にあてはめて考察する例もみられる.しかし,シュンペーターが取り組んだ研究はより広範な社会現象を対象にしており,それらは十分には理解されていない.

本書は,シュンペーターの主要な著作をたどりながら,著作間の主題の結びつき,シュンペーターが追求し解明しようとしていた問題,経済学や社会学に対して抱いていた考えなどを詳しく解説している.シュンペーターの研究への接近方法の1 つは彼の著作を理解することであるが,著者が述べているように「シュンペーターの著作についての総合的な研究は容易ではない」.本書はそれを行う際のよい手引となっている本書で示されるシュンペーターが研究した社会および経済の発展理論から,読者はその理論は「発展(development)」よりもむしろ「進化(evolution)」によってより良く表現できるという著者の主張を理解することになるだろう.シュンペーターの理論が経済学の教科書で取り上げられる機会は少ない.経済学にとどまらないより幅広い分野を含むシュンペーターの理論の把握に役立つ有益な一冊となっている.

目次

謝辞

序文

略記について

第一章 はじめに

一・一 シュンペーターの発展理論の研究計画

一・二 シュンペーターの中心的著作

一・三 シュンペーターの基本的な発展モデル

一・四 本書の構成

第二章 出生から青年時代 ――一八八三–一九一三年

二・一 旧体制オーストリアの中での上昇志向――誕生から大学入学前まで

二・二 ウィーン大学で経済学を志す

二・三 歴史学派と新古典派経済学

二・四 大学卒業後の研究と最初の本

二・五 初期の学問的経歴と二番目の著書

第三章 均衡経済学から発展経済学へ

三・一 経済発展についての競合するアプローチ

三・二 ワルラスの企業者とシュンペーターの企業者

三・三 景気循環の発展的機能

第四章 企業者対経済システム

四・一 S企業者の存在しない定型化された循環的な流れ

四・二 シュンペーターの企業者の機能

四・三 S企業者の特性

四・四 経済発展分析の枠組

第五章 シュンペーターの標準的な例としての鉄道化

五・一 概念の説明

五・二 発展比較静学

五・三 予測不能性と発展のメカニズム

第六章 幕間劇 ――一九一四–二五年

六・一 戦時の政治と研究

六・二 困難な戦後の再建

第七章 社会発展の一般理論に向けて

七・一 歴史学派と社会発展の理論

七・二 社会発展と合理性

七・三 社会発展の一般理論

第八章 経済学者の小さなメッカ ――一九二五–三二年

八・一 ボン大学からの現代化

八・二 社会発展論者による次のメッカの追及

第九章 ハーバード大学教授と研究計画 ――一九三二–四二年

九・一 刺激を与えるハーバード大学教授

九・二 基本的だが未完成な研究計画

九・三 経済危機とケインズ主義

九・四 発展の波と資本主義の発展

第十章 発展の三部作とシュンペーターのモデル

十・一 発展の三部作

十・二 経済発展についてのシュンペーターのモデル

十・三 発展のメカニズムとシュンペーターのモデル

第十一章 資本主義のエンジンの基本的な働き

十一・一 資本主義のエンジンと経済発展

一一・二 経済発展の波の二つの段階

十一・三 企業者の群がりと適応による不況

十一・四 進化統計学とシュンペーターの波

第十二章 資本主義のエンジンの複雑な働き

十二・一 経済発展の複雑性へのアプローチ

十二・二 発展の波の四つの局面

十二・三 発展論による診断、予測ならびに対処

第十三章 資本主義発展の経済史

十三・一 波型発展への第三次接近

一三・二 資本主義プロセスについての筋の通った歴史

一三・三 イノベーションの普及と種類

第十四章 資本主義のエンジンの変容

十四・一 発展のメカニズムの変容

十四・二 マークⅡ概説

十四・三 寡占的競争と経済発展

十四・四 寡占的エンジンの機能

第十五章 資本主義のエンジンと長期的な社会発展

十五・一 資本主義のエンジンのブレーキ

一五・二 発達する資本主義における部門間の共同発展

十五・三 後退する資本主義の部門間の共同発展

十五・四 グローバリゼーションと再び高まった資本主義の進歩

第十六章 晩年 ――一九四三–五〇年

一六・一 シュンペーターの未完成性

一六・二 経済学の歴史の中に生きる

十六・三 シュンペーターの遺産

十六・四 シュンペーターの「最後の論文」

訳者あとがき

参考文献

索引

著者紹介

エスベン・スロス・アンデルセン(Esben Sloth Andersen)

デンマークのオルボー大学教授.

専門は進的化経済学.国際シュンペーター学会元会長.2010 年にグンナー・ミュルダール賞受賞.

著書は,Evolutionary Economics:Post Shumpeterian Contributions (1994)[邦訳:『進化的経済学――シュンペーターを超えて』八木紀一郎 監訳,シュプリンガー・フェアラーク東京(2003)],Schumpeter’s Evolutionary Economics (2009) など多数.

訳者紹介

小谷野 俊夫(こやの としお)

静岡県立大学名誉教授.

1969 年早稲田大学政治経済学部卒.1975 年ペンシルベニア大学ウォートンスクール修了(MBA).

第一勧銀調査部ニューヨーク駐在シニア・エコノミスト,DKB 総研経済調査部長を経て静岡県立大学教授.

翻訳書に『学び直しケインズ経済学 現在の世界経済問題を考える』(2015),『マクミラン経済学者列伝 ケインズ』(2014),『マクミラン経済学者列伝アダム・スミス』(2014),『連邦準備制度と金融危機』(2012)いずれも一灯舎.共訳書に『ケインズ全集 第21 巻: 世界恐慌と英米における諸政策――1931 – 39 年の諸活動』(2015),『欧州中央銀行の金融政策』(2002),『アメリカの金融政策と金融市場』(2000)いずれも東洋経済新報社がある.


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