世界開発報告2017 ガバナンスと法

更新日:2017/12/22

世界開発報告2017

ガバナンスと法

世界銀行 編著

田村勝省 訳

2018年1月出版

定価 5,000円

ISBN:978-4-907600-53-2

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・  目次、要約

概要

注意深く設計された思慮深い政策が採択されない,あるいは実施されないという状況があまりにも多くみられる.これはなぜなのか? 採択,あるいは実施された場合でも,安全保障や成長,公平などの開発成果を生まないことが多いのははなぜか? また,一部の問題のある政策が持続するのはなぜか? 本年度の報告書は,開発の核心にあるこのような根本的な問題に取り組んでいる.

政策の策定や政策の実施は何も真空中でなされるわけではない.むしろそれは複雑な政治的および社会的な環境のなかでなされる.そこでは力が異なる個人やグループが対立する利害を追求しており,それに伴ってルールは変化する.人々はその枠内で相互作用し合う.本報告書ではこのような相互作用のプロセスのことをガバナンス,このような相互作用が行われるスペースのことを政策アリーナと呼ぶ.行為主体が社会的に望ましい目標を達成するために,協調および連携する能力とその意欲が有効性にとっては重要である.しかし,だれが交渉者か,だれが排除されるのか,どのような障壁が政策アリーナへの参入を阻害するかなどが,政策の選定と実施を,したがってその開発成果に対するインパクトを決定する.排除,占有,および恩顧主義は,安全保障,成長,そして公平の達成に向けた取り組みが失敗につながる力の非対称性の表れである.

社会における力の分配はある程度は歴史によって決定されている.にもかかわらず,前向きな変化の余地がある.本レポートは,統治は力の非対称性を緩和ないし克服さえして,安全保障,成長,および公平の持続可能な改善を達成するような,より有効な政策介入をもたらしうることを示している.これが起こるのは,権力者のインセンティブを変化させ,彼らの選好を良い成果を支持する方向に修正させ,これまで排除されていた参加者の利害を考慮に入れる時である.このような変化は改革に向けた連合を強化するルールを支持する国際的な行為主体によるだけでなく,エリート層間での交渉や市民関与の増大を通じることによって実現することが可能である.


訳抜けのお知らせ
本書において、訳抜けがありました。深くお詫び申し上げます。
以下に、抜けていた訳を記載いたします。

該当箇所:本書65ページ冒頭。(「法律というのは・・・」の手前)
挿入訳:
さらに,ガバナンスと開発のダイナミクスは双方向的である.開発の過程においては,資源の再配分や,行為主体への事実上の新たな権力の付与,そして規範の変更が,時間の経過とともに常に起こっている20.そしてこのプロセスには,外部の(外生的な)ショック(例えば,地域的あるいは世界的な金融危機)や内部の(内生的な)構造変化(例えば人口動態の変化など),あるいは規範上の変化(例えば,ジェンダーロールの変化など)が含まれている.このフィードバックプロセスは権力の分配を変え,そしてそのことは次には市民とエリートのさまざまなグループの能力に作用して,そのようなグループの集団行動に関する問題の解決や,政策アリーナに影響を及ぼすことにつながる.

目次

序文

謝辞

略号

概観 世界開発報告2017:ガバナンスと法

開発にかかわる現代の挑戦課題に対処するためにガバナンスを改善する

有効性の動因:コミットメント,連携,および協調

変化へ向けた手段:競争可能性,インセンティブ,選好,そして信念

変革の動因:エリート層の交渉,市民の関与,および国際的な影響

開発のためにガバナンスを再考する

本報告書をナビゲートする

参考文献

PartⅠ 開発のためにガバナンスを再考する:概念的枠組み

1 開発のためのガバナンス:挑戦課題

開発政策を理解する:近接要因と基本要因

開発の目的…そして制約

下半分のためのガバナンス

参考文献

2 開発のためにガバナンスを向上させる:なぜ政策は失敗するのか

成功への多様な道:制度移植を乗り越える

有効性の動因:コミットメント,連携,および協調

力の非対称性が存在するなかでの政策の有効性

変革への手段:インセンティブ,選好・信念,競争可能性

ダイナミックなプロセス:変化の動因と法の支配

参考文献

SPOTLIGHT 1 腐敗

SPOTLIGHT 2 リスク管理におけるガバナンスの挑戦課題

3 法の役割

法律と政策アリーナ

行動を統制する:法律のコマンドとしての役割

権力を統制する:法律の構成的役割

争論を統制する:変化における法律の役割

法の支配に達する

参考文献

SPOTLIGHT 3 有効で公平な法的諸制度はどのようにして出現するか?

Part II 開発のためのガバナンス

4 安全保障のためのガバナンス

ガバナンスは社会の暴力問題を解決できるか?

安全保障,ガバナンス,および権力は密に連動している

ガバナンスは安全を4つの方法で改善することができる

結論

参考文献

SPOTLIGHT 4 戦時期のガバナンス

SPOTLIGHT 5 犯罪

5 成長のためのガバナンス

政策の「占有」はどのようにして経済成長を遅らせるか

ガバナンスは成長にとってどのように重要なのか:ミクロ経済的な視点

政策は有力グループからの不当な作用にどのように影響されるか

占有のリスク下にある政策設計

公的機関の設計は強力なグループの影響力とどのようにして折り合いをつけるのか?

正しいアプローチを見付ける

参照文献

SPOTLIGHT 6 中所得の罠

SPOTLIGHT 7 官民パートナーシップ

6 公平性のためのガバナンス

公平性にとって重要な2つの鍵となる政策分野:公共財への投資と機会の拡充

公平性と制度的機能:コミットメントと協調の役割

政策が公平性をどのように促進するかは力の非対称性に影響され得る

競争条件を平準化してガバナンスを万人により応答的にする

交渉力の非対称性を考慮することによって政策の有効性を改善する

参考文献

SPOTLIGHT 8 サービス提供:教育と医療

Part III 変革の動因

7 エリート層の交渉と適合化

エリート層の交渉を理解する

エリート層の交渉と不均等な国家の能力

エリート層の力を高めるために政策アリーナを広げる

説明責任について拘束性のあるルールが政治的な保険として機能する場合

エリート層がルールに基づく制度を通じて適応する場合

エリート層の適応を通じた変化へのエントリー・ポイント

参考文献

SPOTLIGHT 9 分権化

SPOTLIGHT 10 公共サービス改革

8 変化をもたらす主体としての市民

投票箱を通じて変化をもたらす

政治団体を通じて変化をもたらす:政党の役割

社会組織を通じて変化をもたらす

誘導的参加と公開審議の役割

変革に向けたエントリー・ポイント:市民の活動を集団的行動問題として理解する

参照文献

SPOTLIGHT 11 市民の関与を通じて透明性から説明責任へ

SPOTLIGHT 12 メディア

9 相互接続した世界におけるガバナンス

超国家(トランスナショナル)主義と国内の政策アリーナ

超国家的なルールと規則:協調の強化と変化のための中心点

外国援助とガバナンス

参照文献

SPOTLIGHT 13 違法な金融フロー

索引

著者紹介

世界銀行

世界銀行について

訳者紹介

田村 勝省(たむら かつよし)

東京外国語大学および東京都立大学卒業.

旧東京銀行および関東学園大学教授を経て翻訳家.