世界の雇用及び社会の見通し 2021 変容する仕事の世界におけるデジタル労働プラットフォームの役割

更新日:2022/06/22

世界の雇用及び社会の見通し 2021

変容する仕事の世界におけるデジタル労働プラットフォームの役割

ILO(国際労働機関) 著

田村 勝省 訳

2022年6月 発行

定価 5,0000円+税

ISBN:978-4-907600-74-7

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・  序文、目次、サマリー

概要

ILOのこのフラッグシップ・レポートは,現代のプラットフォーム経済が仕事が組織化される際の仕方をどのように変革しつつあるかを探求し,デジタル労働プラットフォームが企業,労働者,および社会全体に及ぼすインパクトを分析している.

この報告書はweb基盤型オンライン・プラットフォームと活動地点基盤型プラットフォームにおける労働者と企業の経験に関する包括的な描写を,複数の部門における,世界中の企業85社の代表者と約12,000人の労働者に対する調査とインタビューに依拠して提示している.また,デジタル労働プラットフォームのビジネス・モデルに関する洞察を提示し,世界中の規制面での対応を検討し,そしてすべてのプラットフォームにおける仕事がディーセント・ワークになることを確保するために,前進する際の方途を提示している.

プラットフォーム労働者の労働の実態(アルゴリズムによる管理と評価、手数料、企業の収益モデルなど)、から、プラットフォーム企業が得ている資金、契約内容、規制環境にいたるまで、プラットフォーム労働のさまざまな側面を、広範かつ詳細に述べており、加えて、新型コロナのパンデミックがプラットフォーム労働に与えた影響についても、考察している。

目次

序 文

謝 辞

略 号

エグゼクティブ・サマリー

1 産業のデジタル変革と仕事の世界

はじめに

1.1 デジタル経済の台頭

1.1.1 デジタル経済の鍵となる特徴

1.1.2 デジタル・プラットフォームの台頭

1.1.3 オープンソース革新

1.1.4 市場支配力は少数のプラットフォーム企業に集中

1.2 デジタル・プラットフォーム:経済の諸部門に普及し,浸透している

1.2.1 個人ユーザー向けにサービスを提供するデジタル・プラットフォーム

1.2.2 ユーザー間のやり取りを促進および仲介しているデジタル・プラットフォーム

1.2.3 仕事を仲介するデジタル労働プラットフォーム

1.3 デジタル労働プラットフォーム:プラットフォームと労働者の数に関する推定値

1.3.1 デジタル労働プラットフォームの数

1.3.2 デジタル労働プラットフォームに従事している労働者の数

1.3.3 [調査対象となった]主要なweb 基盤型オンライン・プラットフォームにおける労働の需要と供給の動向

1.4 データ主導型経済と機械学習アルゴリズムの台頭

1.4.1 データの潜在的利用

1.4.2 データを巡るユーザーの権利に関連する問題

1.4.3 機械学習アルゴリズムの台頭

1.5 デジタル労働プラットフォームの台頭に対するファイナンス

1.5.1 デジタル労働プラットフォームの地理:資金調達と収益

結論

2 デジタル労働プラットフォームのビジネスモデルと戦略

はじめに

2.1 デジタル労働プラットフォームの種類

2.1.1 web 基盤型オンライン・プラットフォーム

2.1.2 活動地点基盤型プラットフォーム

2.2 収益モデル

2.2.1 フリーランス形態とコンテスト形式のプラットフォーム

2.2.2 競技プログラミング形式プラットフォーム

2.2.3 マイクロタスク形式プラットフォーム

2.2.4 タクシー配車のプラットフォーム

2.2.5 配送プラットフォーム

2.3 労働者の採用,および労働者とクライアントのマッチング

2.3.1 プラットフォームでの雇用関係

2.3.2 プラットフォームにアカウントを開設するための基本的要件

2.3.3 アルゴリズムによるクライアントと労働者のマッチング

2.4 業務プロセスとパフォーマンスの管理

2.4.1 業務プロセスとコミュニケーション

2.4.2 アルゴリズムによるパフォーマンス管理

2.5 デジタル労働プラットフォームの統治ルールと労働者の働く自由

結論

3 経済におけるデジタル労働プラットフォームの普及:企業は,デジタル労働プラットフォームをどのように,また,なぜ活用しているのか?

はじめに

3.1 web 基盤型オンライン・プラットフォームを利用している企業

3.1.1 求人

3.1.2 コスト削減と効率化

3.1.3 革新のための知識へのアクセス

3.2 活動地点基盤型プラットフォームを利用している企業

3.3 デジタル・プラットフォームがBPO 会社やデジタル技術系新設会社に向けて生み出す機会

3.3.1 BPO 会社における変革

3.3.2 デジタル技術系新設会社の出現

3.4 デジタル・プラットフォームの従来型の企業に対するインパクト

結論

4 デジタル労働プラットフォーム,および仕事の再定義:労働者にとっての機会と課題

はじめに

4.1 プラットフォーム労働者の基本的な人口統計的特性

4.1.1 プラットフォーム労働者の年齢構成

4.1.2 男性および女性の労働者のプラットフォームへの参加

4.1.3 農村部出身および都市部出身の労働者の参加

4.1.4 移民のプラットフォームへの参加

4.1.5 プラットフォーム労働者の健康状態

4.1.6 プラットフォーム労働者の教育水準

4.1.7 プラットフォームの仕事に従事する労働者の動機

4.1.8 プラットフォームでの仕事に対する労働者の満足度

4.2 デジタル労働プラットフォーム上での労働者の経験および仕事の質

4.2.1 十分な量の仕事へのアクセス

4.2.2 デジタル労働プラットフォーム労働者の所得

4.2.3 労働時間とワークライフ・バランス

4.2.4 労働安全衛生

4.2.5 社会的保護へのアクセス

4.3 アルゴリズムによる管理下での労働者の自律性と統制

4.3.1 仕事に関する自律性と統制

4.3.2 格付け, 評価,および紛争解決

4.4 スキル修得とミスマッチ

4.5 プラットフォームの設計と差別

結論

5 デジタル労働プラットフォームにおいてディーセント・ワークを確保

はじめに

5.1 デジタル労働プラットフォームによる規則: サービス利用規約

5.1.1 プラットフォームのサービス利用規約

5.1.2 デジタル労働プラットフォームは利用規約をみずから改善するだろうか?

5.2 労働と社会的保護のためにデジタル・プラットフォームを規制:何を目標にすべきか?

5.2.1 すべの働く人々にとっての労働基準:ILO の法律文書

5.2.2 すべてのデジタル労働プラットフォーム労働者にその地位とは無関係に適合化可能な条約の原則

5.2.3 雇用と密接に結び付いたディーセント・ワークの要素:2006 年のILO 雇用関係勧告(第198 号)

5.2.4 雇用関連の基準と自営業プラットフォーム労働者

5.3 ディーセント・ワークを達成:プラットフォーム経由の労働への規制面での対応

5.3.1 結社の自由, 団体交渉,およびその他の形の社会的対話

5.3.2 非差別

5.3.3 強制労働と児童労働

5.3.4 労働安全衛生

5.3.5 社会保障

5.3.6 新型コロナウイルス感染症のパンデミック,およびそれが労働安全衛生と社会保障に対して持つ意味

5.3.7 支払い制度, 公正な解雇,および明瞭な利用規約

5.3.8 データへのアクセス,プライバシー,および仕事の流動性

5.3.9 苦情と紛争解決

5.3.10 雇用関係

5.3.11 報酬と労働時間

5.3.12 貿易協定におけるプラットフォームの仕事や労働に関する条項

結論

6 好機をとらえる:将来へ向けて進むべき道

はじめに

6.1 デジタル労働プラットフォームにおける好機と挑戦課題

6.1.1 企業にとっての好機と課題

6.1.2 労働者にとっての好機と課題

6.2 採用されつつある規制面での対応

6.2.1 国家司法権

6.2.2 社会的パートナーによるイニシアティブ

6.2.3 他の非国家主体によるイニシアティブ

6.3 課題を克服して恩恵をつかみとる

6.3.1 規制面でのギャップに取り組む

6.3.2 デジタル労働プラットフォームにおけるディーセント・ワークにとって他の分野の法律や政策が有する関連性

6.4 将来に向けて進むべき道

補 遺

1. デジタル労働プラットフォーム:労働者数, 投資額,および収益の推定値

2. ILO によるデジタル・プラットフォーム会社との面談,

およびサービス利用規約の分析

3. ILO による企業,およびクライアント(依頼者)との面談

4. ILO による調査, 面談,および統計分析

5. ILO による労働組合や労働者連合会との面談

参考文献

著者紹介

ILO(国際労働機関)

ILO は1919 年に,ベルサイユ条約によって国際連盟と共に誕生した.第1 次世界大戦後の社会改革に対して高まる懸念,そしてあらゆる改革は国際的なレベルで進められるべきだという確信を体現するものとして設立された.

第2 次世界大戦後,フィラデルフィア宣言によってILO の基本目標と基本原則が拡大され,力強く再確認された.宣言は戦後における独立国家数の増大を予見し,大規模な対途上国技術協力活動の開始を明言した.1946 年,ILO は新たに設立された国際連合と協定を結んだ最初の専門機関となり,創立50 周年にあたる1969 年にはノーベル平和賞を受賞した.

訳者紹介

田村 勝省(たむら かつよし)

東京外国語大学および東京都立大学卒業.
旧東京銀行および関東学園大学教授を経て翻訳家.