社会対話レポート 2022 包摂的かつ持続可能で強靭な回復に向けた団体交渉

更新日:2022/11/26

社会対話レポート 2022

包摂的かつ持続可能で強靭な回復に向けた団体交渉

ILO(国際労働機関) 著

田村 勝省 訳

2022年11月 発行

定価 5,0000円+税

ISBN:978-4-907600-76-1

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・  序文、目次、サマリー

概要

ILOによるフラッグシップ・レポート『社会対話レポート』の初号は団体交渉に焦点を合わせている。社会対話の長年にわたるプロセスとして、団体交渉は多くの諸国で、ディーセント・ワークを確保し、機会と処遇の平等を保証し、賃金の不平等を削減し、そして労使関係を安定化させることにおいて重要な役割を果たしてきている。団体交渉は労働環境と雇用条件を規制するための独特な体系――交渉当事者自身によって制定される――を提供している。本報告書では仕事の包摂的で効果的な統治に対して、団体交渉を通じて使用者および労働者の団体が行っている貢献に注目している。

本報告書は、団体交渉がCOVID-19危機の雇用や所得に対するインパクトを緩和し、不平等に対するその影響の一部を和らげるのを支援すると同時に、企業と労働市場の強靭性を強化することにおいて果たした役割を検討している。職場における公衆衛生措置を調整し、労働安全衛生を強化することは、多くの労働協約で規定されている有給の病気休暇や医療給付と共に、労働者を保護し、経済活動の継続性を支えた。

将来を展望して、本報告書は人間を中心に据えた回復への団体交渉の貢献を検討している。本報告書は、仕事の統治において雇用者および全ての労働者に発言権を与えている民主的な原則と権利、すなわち結社の自由と団体交渉権の効果的な承認を再確認することの必要性を強調している。このようなILO創設の原則は、強固で代表となる労働者および使用者の団体の発展を可能にする。そしてこれらの団体の行動と合意事項は、包摂的かつ持続可能で強靭な回復へ向かう道を整えることができる。

目次

序文

謝辞

略語

1 はじめに

1.1 集団交渉とは何か

1.2 集団交渉と仕事の統治

1.2.1 団体交渉:可能化する権利

1.2.2 団体交渉:社会対話のプロセス

1.2.3 団体交渉:実体的な成果

1.2.4 団体交渉:包摂的で効果的な仕事の統治に貢献

1.3 本報告書の構成 2 団体交渉:規制の適用範囲を形成

2 団体交渉:規制の適用範囲を形成

2.1 団体交渉権の効果的な承認

2.2 世界各国の団体交渉:鍵となる規制のトレンド

2.2.1 団体交渉権の法的な適用率

2.2.2 交渉テーブルの設置

2.2.3 労働協約の適用

2.3 労働協約の対象に含まれる労働者の割合 3 労働協約の範囲

3 労働協約の範囲

3.1 賃金と労働時間

3.1.1 賃金

3.1.2 労働時間

3.2 労働安全衛生

3.3 社会的保護

3.4 雇用条件

3.5 仕事の変転

3.5.1 技術面での変転

3.5.2 環境面での変転

3.6 スキル開発

3.7 平等性,多様性,および包摂性

3.7.1 ジェンダー間の平等

3.7.2 多様性と包摂性

3.8 健全な労使関係

4 使用者団体と労働組合:再編と再生

4.1 使用者・企業会員組織(EBMO)に関連する動向

4.1.1 EBMO 概観:誰を代表しているのか?

4.1.2 社会経済的な動向,および長期的な挑戦課題に対するEBMO の対応

4.1.3 団体交渉における当事者としてのEBMO

4.2 労働組合および労働者団体に関連する動向

4.2.1 労働組合概観:誰を代表しているのか?

4.2.2 労働組合が直面している現在の挑戦課題:どのように対応しているか

4.2.3 労働組合:団体交渉,およびその枠を越えた役割

4.3 再構築と再生 5 団体交渉とCOVID-19 パンデミック:強靭性を構築

5 団体交渉とCOVID-19 パンデミック:強靭性を構築

5.1 COVID-19 のパンデミック期を通じて交渉を継続

5.2 最前線の労働者を保護し,基幹サービスを維持

5.3 安全で衛生的な職場を確保

5.4 雇用の維持,所得の保護,および事業継続性の保護

5.5 将来のテレワークとハイブリッド・ワークの慣行を形成 6 包摂的かつ持続可能で強靭な回復のための交渉

6 包摂的かつ持続可能で強靭な回復のための交渉

6.1 雇用者および労働者の団体に新たな活力を与える

6.2 全ての労働者のために団体交渉権の効果的な承認を実現

6.3 包摂的かつ持続可能で強靭な回復に向けて団体交渉を促進

6.4 ピーク・レベルの二者構成および三者構成による社会対話に投資

6.5 SDG の達成に向けて社会対話を強化

補遺

補遺Ⅰ:労働協約の適用に関する法的枠組みの指標

補遺Ⅱ:労働組合組織率と団体交渉適用率

補遺Ⅲ:EBMO に関する調査

補遺Ⅳ:団体交渉に関する国レベルの研究,最前線労働者に関する事例研究,

およびインタビュー

補遺Ⅴ:労働協約のコード化とテキスト分析

補遺Ⅵ:COVID-19 パンデミック期間におけるOSH 順守に関する

ベターワーク評価の方法論

参考文献

著者紹介

ILO(国際労働機関)

ILO は1919 年に,ベルサイユ条約によって国際連盟と共に誕生した.第1 次世界大戦後の社会改革に対して高まる懸念,そしてあらゆる改革は国際的なレベルで進められるべきだという確信を体現するものとして設立された.

第2 次世界大戦後,フィラデルフィア宣言によってILO の基本目標と基本原則が拡大され,力強く再確認された.宣言は戦後における独立国家数の増大を予見し,大規模な対途上国技術協力活動の開始を明言した.1946 年,ILO は新たに設立された国際連合と協定を結んだ最初の専門機関となり,創立50 周年にあたる1969 年にはノーベル平和賞を受賞した.

訳者紹介

田村 勝省(たむら かつよし)

東京外国語大学および東京都立大学卒業.
旧東京銀行および関東学園大学教授を経て翻訳家.


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