世界労働レポート 2014 仕事を伴う開発

更新日:2015/03/11

世界労働レポート 2014

仕事を伴う開発

ILO 著

田村勝省 訳

2015年3月 発行

定価 4,000円

ISBN978-4-907600-31-0

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・  序文,目次

概要

貿易の自由化,およびインフラや教育への投資は,以前から経済開発の重要な牽引力であるとみなされている.しかしこのアプローチは,新規卒業者を含む若年失業者の増加と所得不平等の拡大という脆弱な経済成長のパターンへの取り組みに失敗してきたそのような脆弱な経済成長は,多くの途上国で典型的に見られるものである.
本レポートは,140 カ国以上の途上国におけるトレンドや政策革新の詳細な検討に基づいて,新しい証拠を収録している.レポートから,適切な仕事の機会を促進することに焦点を当てた戦略は持続的な開発という結果を生み出す傾向があることが明らかになった.対応する適切な仕事の増加を伴わずに経済成長を改善した国のなかで,健全な経済実績を何とか維持した国はわずかである.
本レポートでは,より多くのより良い仕事を,また,その結果として開発を促進するという点において,「何が機能するか」も検討している.すなわち,次のような問題を考察している.

・適切な仕事は経済と人間の開発を実現するのに必要な,経済・投資・反腐敗の政策とどのように相互作用するのか?
・雇用政策と社会的保護を途上国で成功させるにはどうしたらよいか?
・開発に伴う利益は,企業のダイナミズムを維持しながらどの程度公平に共有できるか? また,この面における労働基準の役割はどのようなものか?
・移住は,どのようにしたらプラスの開発要因に転換されるのだろうか?

「仕事を伴う開発」という副題の本レポートは,証拠に基づいた情報を提供することで2015 年以降の開発アジェンダに関する議論に貢献するだろう.

目次

要約

1. 本レポートの概観と構成――グローバルな状況と発展途上世界における雇用と社会のトレンド

本レポートの構成

補遺A 本レポートで使われている国の分類

パートI 開発の牽引力としての仕事

2. 途上国における成長パターン

はじめに

A. 経済成長のパフォーマンス

B. 経済成長の構成と性格

補遺A 経済的証拠

参考文献

3. 雇用パターン,およびその経済開発との連関

はじめに

A. 途上国の雇用パターン

B. 途上国における仕事の質に関する措置

C. 良質な仕事が開発の牽引力

結論

参考文献

4. 成長パターンを分解する――投資,消費,政府支出,輸出,および教育の役割

はじめに

A. 成長の構成要因に関するトレンド

B. 成長パターンはさまざま:ブラジルと中国の事例

C. 人的資本の役割

参考文献

パートII 仕事を伴う開発のための政策

5. 生産的転換,適切な仕事,そして開発

はじめに

A. 経済的・社会的な格上げを通じた生産的転換

B. 競争力を求めて:王道それもと底辺への競争?

C. 結び

参考文献

6. 労働・社会的保護制度――最近のトレンドと開発への影響

はじめに

A. 制度と開発

B. 労働制度

C. 労働・社会制度と非公式性

D. 結び

参考文献

7. 社会的保護,生活水準,経済開発――トレンドの概観と政策の評価

はじめに

A. 途上国における社会的保護:支出と適用範囲の新しいトレンド

B. 実施中の社会的保護政策:革新と格差

C. 社会的保護と開発

D. 結論

補遺A 各国の社会的保護戦略の類型

参考文献

8. 所得分配は開発にとって重要か?

――途上国の所得にかかわる労働分配率のトレンドとその経済的インパクト

はじめに

A. 総所得に占める労働シェアのトレンドをみることが,なぜ重要なのか?

B. 途上国における労働分配率のトレンド

C. 自営業所得について労働分配率を調整する

D. 労働分配率の変化がもたらす経済への影響

E. 要約と政策に対してもつ意味

補遺A 労働分配率のトレンド(追加的な分析)

補遺B 労働分配率を自営業所得について調整する方法

補遺C グローバル・ポリシー・モデル

補遺D ラテンアメリカ5 カ国に関する経済的な影響の分析

参考文献

9. 国際移住と経済開発

はじめに

A. 国際移住のトレンド

B. 国際移住の経済的帰結

C. 政策的配慮:労働移住を成長と国際開発に活用する

補遺A 移住と人的資本を織り込んだモデルで1 人当たりGDP の成長を分解する

補遺B 送金のマクロ経済的な影響

参考文献

最近の出版物

著者紹介

国際労働機関(ILO : International Labor Organization)

 国際労働機関(ILO : International Labor Organization)は1919 年に,社会正義の促進,そして,世界的な平和とその持続を目的として設立された.創立50 周年にあたる1969 年にはノーベル平和賞を受賞している.この機関の事務部門,事業本部,調査研究センター及び出版部門の本拠は,ジュネーブにある国際労働事務局である.その管理運営は,40 以上の国にある地域総局及び現地事務所に分散されている.国際労働機関は国連に加盟する機関では独特の三者(政府,使用者,労働者)構成を採用しており,理事会にはこの三者の代表も含まれている.これは,政策策定や計画立案時には,経済を動かす社会的パートナーである労使代表も政府と等しく発言する権利をもっている,という理念に基づくものである.上記の三つの団体は,ILO が後援する各地域での活動や会合に参加するだけでなく,国際労働総会にも出席している.この国際労働総会は,毎年開催されており,世界の労働問題,社会問題を討議する国際フォーラムでもある.

 国際労働機関は長い年月にわたり,労働組合,労働者,社会政策,雇用条件,社会保障,企業間の交渉や労働行政などに関する問題に,参加各国の様々な条件を考慮しつつ取り組んできている. 国際労働機関は,40 カ国以上からなる地域総局や労使団体間の情報交換を通して,助言や技術的な支援を行っている.この支援活動には,労働者の権利と企業間交渉に対する助言,雇用の促進,小規模な企業の発展を目的とした教育,計画の策定などが含まれる.またさらに,社会保証や労働条件,労働環境の安全性に関するアドバイス,労働に関する統計の比較と公表,労働者教育も行っている.

訳者紹介

田村 勝省(たむら かつよし)

1949 年生まれ.東京外国語大学および東京都立大学卒業.旧東京銀行で調査部,ロンドン支店,ニューヨーク支店などを経て,現在は関東学園大学教授,翻訳家.

訳書
アメリカ大恐慌(上下)』(NTT 出版,2008 年)
シュンペーター伝 革新による経済発展の預言者の生涯』(一灯舎,2010 年)
世界給与・賃金レポート2012/2013 給与・賃金と公平な成長 』(一灯舎,2013 年)
世界労働レポート2013  経済・社会の構造を修復する』(一灯舎,2014 年)
世界開発報告2013 仕事 』(一灯舎,2014 年)
世界雇用情勢2014 雇用なき回復のリスク?』(一灯舎,2014 年)
ヨーロッパの行き詰まり ユーロ危機は今後どうなるのか』(一灯舎,2014 年)
悪い奴ほど合理的 腐敗・暴力・貧困の経済学』(NTT 出版,2014 年)
世界開発報告2014 リスクと機会 開発のためのリスク管理 』(一灯舎,2014 年)
『アメリカと中国 もたれ合う大国』(日本経済新聞出版,2015 年)


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