脳からみた音の科学

更新日:2011/02/28

脳からみた音の科学

安藤 四一 著

2011年2月 発行

定価 2,800円

ISBN 978-4-903532-69-1

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・  序,目次

概要

好い音楽と出会うと人々は生き生きとする。それは生命を維持し養う力を持っているからであり,原始的で生理的心理的な反応である。音響学の世界的権威で、多くの音楽ホールの設計に貢献してきた著者は、本書でこれらを多数の事例と図表でわかりやすく解説している。音響学や心理学、生理学に関心のある方だけでなく、音楽演奏家、演奏会に通う人々に有益である。「好くない音」が発達と健康へ及ぼす影響にも言及しており,環境に関心のある学生や建築設計者、一般の人にも必携の本である。

目次

読者一人ひとりへ

背景となった著書(第1部)

背景となった論文(第2部)

謝辞

第 I 部感性音響学―好い音の科学

第1 章はしがき

第2 章音場の時間的・空間的ファクター

第3 章大脳半球の分化

第4 章聴覚―大脳系のモデル

4.1 頭部,耳介と外耳道の物理システム

4.2 鼓膜と耳小骨の物理システム

4.3 蝸牛の進行波システム

4.4 聴覚路の神経機能システム

4.5 聴覚―大脳系の全体モデル

第5 章好みに対応する大脳活動

5.1 頭頂部緩反応(Slow Vertex Response: SVR)

5.2 脳波上の反応(Electro-Encephalogram: EEG)

5.3 脳磁波上の反応(Magnetro-Encephalogram: MEG)

第6 章音場の時・空間的ファクターに対する好み

6.1 単一反射音の音場(時間的ファクター)

6.2 単一反射音の好ましい到来方向(空間的ファクター)

6.3 多重初期反射音の音場

6.4 残響音付加の音場

第7 章プリファレンス理論(好みの理論)

7.1 プリファレンス理論

7.2 設計の具体化・具現化

第8 章ホールの音響設計例

8.1 ニューヨークフィルハーモニックホールの改修案

8.2 世界に誇るホールの誕生過程

第9 章実存のホール音場における理論の検証

9.1 ホール音場の時間的・空間的ファクターの計測システム

9.2 ホール音場の時間的・空間的ファクターの実測例

9.3 プリファレンス理論の検証

第10 章一人ひとりに好い座席

第11 章音の四要素(時間的基礎感覚)

11.1 音の高さ(Pitch)―空耳基本波(Missing Fundamental)の解明

11.2 音の大きさ(Loudness)

11.3 音色(Timbre)

11.4 音の継続時間感覚(Duration)

第12 章音場の三要素(空間的基礎感覚)

12.1 水平面内の定位(Localization)

12.2 音源の見かけの幅(ASW)

12.3 拡がり感(Subjective diffuseness)

第13 章第2 の楽器としてのホール音場

13.1 音源と音場の融合理論の概要

13.2 作曲による音場の時間的ファクターとの融合

13.3 作曲による空間的表現

13.4 演奏による空間的表現

13.5 演奏による音場の時間的ファクターとの融合

第14 章楽音,騒音や音声等の計測

14.1 楽音,騒音や音声等の計測システム

14.2 ピアノのピッチの実測例

14.3 美の表現要素ϕ

14.4 音声認識方式

第15 章むすび

第 II 部騒音の蓄積的影響―好くない音の科学

第16 章はしがき

第17 章生後乳児の睡眠中の反応

17.1 母親へのアンケート調査

17.2 容積脈波上の反応

17.3 順応の限界―睡眠リズムの乱れ

第18 章胎盤機能

第19 章生時体重

第20 章児童の大脳半球分化

20.1 加算(左脳)作業について

20.2 欠陥発見(右脳)作業について

20.3 大脳半球分化

第21 章児童の身長

第22 章学童の時間感覚

第23 章成人への影響

23.1 聴覚系への影響

23.2 不快感(アノイアンス)

23.3 不快感(アノイアンス)に対応した脳波

23.4 睡眠妨害

23.5 聴取妨害の取り組み方針(一例)

23.6 ストレスと内分泌系への影響

第24 章むすび

謝辞

付録A.1. 音源信号の自己相関関数(ACF)

付録A.2. 両耳間に到来する音の相互相関関数(IACF)

付録A.3. 音場の4 つの時間的・空間的ファクター

付録A.4. 有限板からの反射伝達関数

付録A.5. 音声のプリファレンスと明瞭度

付録A.6. 音声認識の原理

おわりに

記号と用語説明

参考文献

索引159

著者紹介

安藤 四一(あんどう よいち )

生い立ち
1939 東京生まれ.3歳のとき両親の故郷へ疎開,美作の自然(小川の水面と底の小石,菜の花と蝶,水車と水しぶき,轍の小路(通学路),梢を通って差し込む窓からの月光,焚き火,川面に映るホタルの光り)に魅せられ地元「火ノ神」で百姓を目指す.幼稚園拒否,小学校登校拒否するも姉からお巡りさんが迎えにくるという一言で断念.1952 年父他界.このとき母からこの世は何回も滅びその度に再生したのでは?(「火ノ神物語・宇宙循環説」未刊)と聴く.このことがきっかけとなり「環境・人間・時間とは何か」について,この視点から研究を重ね現在に至る.

略歴
1960 神戸大学建築学教室勤務;1962 国家公務員上級甲種「通信」合格(音響の反射,散乱,放射等の研究);1968 航空機騒音の胎児・児童に及ぼす影響の研究(−1975);1975 早稲田大学より工学博士(室内音場の電算機シミュレーションと心理的評価);1975 ゲッチンゲン大学第3 物理学研究所研究員:アレキサンダー・フォン・フンボルトフェロー(コンサートホール音響学の研究−1977);1979 神戸大学工学部 助教授(聴覚−大脳機能の研究);1995 神戸大学大学院(自然科学研究科)専任教授;2001 Journal Temporal Design:“建築・環境の時間設計に関する国際学術誌”(http://www.jtdweb.org/ 創刊;−現在);2002 フェラーラ大学(イタリア)名誉博士;2003 神戸大学名誉教授.

主な著書
「読者一人ひとりへ」のところを参照.

原著論文
(1) Ando, Y. (1968). The “interference-pattern method” of measuring the complex reflectioncoefficient of acoustic materials at oblique incidence, Electronics and Communication inJapan, 51-A, 10-18. (2) Ando, Y. (1969/70). On the sound radiation from semi-infinite circularpipe of certain wall thickness, Acustica, 22, 219-225 など約130 編.


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