ユダヤ人の成功と悲劇 資本主義と民族主義への対応

更新日:2012/02/28

ユダヤ人の成功と悲劇

資本主義と民族主義への対応

ジェリー・ ミューラー 著

千葉啓恵 訳

2012年2月 発行

定価 1,800円

ISBN 978-4-903532-79-0

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・  序文,目次

概要

資本主義とユダヤ人のユニークな関係は,近代のヨーロッパとユダヤ人の歴史を理解するうえで重要である.資本主義に関する一流の歴史学者であるジェリー・ミュラーは本書で,神話と現実を分離し,ユダヤ人が経験した資本主義が,なぜそれほど重要で複雑で,なおかつ相反する感情をもたらすものだったのかを説明している.

本書では,中世のヨーロッパから現代のアメリカとイスラエルまでの,経済的,社会的,政治的,文化史的な歴史について描き,ヨーロッパの思想において,資本主義について考えることとユダヤ人について考えることが,どのように密接に関係し合っていたのか,また,なぜ反資本主義と反ユダヤ主義がしばしば結びつけられていたのかを検討する.

また,なぜユダヤ人が資本主義社会において,他とは比べ物にならないほどの成功をおさめる傾向があったのか,また最も積極的な反資本主義者や共産主義者には,なぜユダヤ人が多かったのかについても説明する.さらに,お金は非生産的なものであるという大昔の考え方が,どのようにして高利貸しとユダヤ人に対する非難から資本主義への非難へ,ついにはマルクス主義における資本主義そのものへの非難へとつながっていったのかを明らかにする.最後に,商業的なディアスポラ・マイノリティーとしてのユダヤ人の伝統的地位が,どのようにして彼らの経済的成功を促したのか,またなぜ,19 世紀と20 世紀の民族的ナショナリズムの影響を非常に受けやすかったのかも明らかにしている.

本書は歴史上重要であるのによく誤解されていたテーマを新たな視点から見直すことで,資本主義の発展におけるユダヤ人の役割や,近代のユダヤ人の運命における資本主義の役割,また資本主義とユダヤ人をめぐる物語が,中世から現代までのヨーロッパなどの歴史にどのように影響したのかなどを興味深く述べている.
現代の世界の政治情勢,特にアメリカの政治経済を理解するのに本書は役に立つだろう.

目次

目次

はじめに

ユダヤ人と資本主義に関する考察

第一章 高利貸しの長い影

近代ヨーロッパの思想における資本主義とユダヤ人

第二章 資本主義に対するユダヤ人の反応

ミルトン・フリードマンのパラドックスを再考する

資本主義への過渡期におけるユダヤ人の人口動態

近代以前の経験と文化的傾向

ユダヤ人の経済的成功

政治的、イデオロギー的反応

相対的な観点からみたアメリカ人の経験

第三章 過激な反資本主義

共産党員としてのユダヤ人

ソビエトでの厳しい試練

失敗に終わったドイツの革命

ハンガリー

ボリシェヴィキとしてのユダヤ人の神話

西ヨーロッパおよび東ヨーロッパ

第二次世界大戦後

第二次世界大戦後のハンガリー

ソ連圏の他の場所

第四章 二〇世紀のヨーロッパにおけるナショナリズムの経済学とユダヤ人の運命

謝辞

参考文献

索引

著者紹介

ジェリー Z. ミューラー(Jerry Z. Muller)

ジェリー Z. ミューラーはワシントンDC. にあるアメリカ・カトリック大学の歴史の教授.The Mind and the Market: Capitalism in MOdern European Thought (Knoft)およびAdam Smith in His Time and Ours (Princeton) などの著書がある.彼の著作はウォール・ストリート・ジャーナル誌,ニュー・リパブリック誌,タイムズ文芸付録などに掲載されている.

訳者紹介

千葉 啓恵(ちば ひろえ)

東北大学大学院農学研究科修士課程修了.化学会社研究所勤務を経て、現在は生物科学・自然科学関連の翻訳者.

訳書
『幹細胞WARS ―ー幹細胞の獲得と制御をめぐる国際競争』[共訳](一灯舍,2009 年)
『グローバル・フィーバー ――地球温暖化の症状と対応策 』(同,2010 年)
『天災と人災 ――惨事を防ぐ効果的な予防策の経済学』(同,2011 年)


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