世紀の名作はこうしてつくられた

更新日:2013/06/18

世紀の名作はこうしてつくられた

「風と共に去りぬ」の原稿発掘から空前の大ベストセラーへ,著者による著作権保護のための孤軍奮闘

エレン・F・ブラウン / ジョン・ワイリー二世 著

近江 美佐 訳

2013年6月 発行

定価 3,200円

新 : ISBN 978-4-907600-23-5
旧 : ISBN 978-4-903532-94-3

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・  序文,目次

概要

「この小説は壮大で読者の心をとらえてはなさない,著者はストーリー展開のテンポを緩急自在に操り,登場する人物の一人一人の描写が生々しい」,「ついにアメリカにも不朽の名作を書ける若い女性作家が現れた」.『風と共に去りぬ』は,今日においても世界中で読まれ続けており,アメリカ文化の一部となっています.書簡を含む新たに入手可能となった資料を基に,ミッチェルの心境や,出版後に一躍有名になったことや次々に発生する著作権問題に翻弄されるミッチェル,そのミッチェルを支える人達,水面下での交渉,続編の誕生を巡る論争を描いています.世紀の名作に新たな魅力を与える一冊となっています.

発刊七十五周年を迎えるにあたり、われわれは新しい試みをおこなった。『風と共に去りぬ』が世界的な超ベストセラーとなっていく過程に焦点をしぼり、その歴史をはじめて一冊の本にした。本書は著者ミッチェルの伝記でなく、その著作の伝記であり、この小説の起源が生まれたミッチェルの幼少時代から、一つの文化現象にまで発展した現在までの歴史を描いたものである。われわれは、この小説がアトランタの狭いアパートからニューヨークの五番街のマクミラン社へ、そして全米へ、全世界へとはばたいていった軌跡を丹念に追った。タイプライターと電報の時代にこの小説がいかにして生まれ、世に出て、そして世界を席巻していったか、その課程を描き出した。そこには当然、著者や出版社、代理人の愛憎というものが存在し、とりわけ著作権管理をめぐる攻防はすさまじい。われわれはそういった部分にも躊躇なく入り込んだ。著者ミッチェルは著作権を守るために自ら戦いつづけ、それが引き金となって国際著作権法に対するアメリカの方針が変わっていった。海外の海賊版の流出を自ら阻止しながら、マーク・トウェイン以後、世界にセンセーションを巻き起こした作家として、ミッチェルはアメリカ人作家の外国著作権の保護の必要性を強く訴えた。本書はそういったミッチェルの活動や、著作権管理者としての仕事ぶりも紹介している。さらに、本書は著者の伝記ではないので、著者が亡くなっても話は終わらない。ミッチェルの死後、夫、兄、そしてアトランタの三人の弁護士が、世界で最も価値のある著作権を守り、多大な利益を生み出していく激動の歳月にもスポットをあて、現在までの全軌跡を描き出している。   (本書「序文」より抜粋)

本書は、一作の小説がたどる劇的な運命を縦糸とし、この小説に関わる人々の人間模様を横糸とした、人間ドラマ色の強い作品となっている。作者マーガレット・ミッチェルの視点だけでなく、夫マーシュの視点、マクミラン出版の視点、著者自身の視点をとりまぜ、この小説の起源から「聖書に次ぐ大ベストセラー」となった現在までを、立体的、多面的に描き出している。…貴重な文書を巧みに織りまぜ、真実を紡いでいく展開は、臨場感と緊迫感に満ちている。 (本書「訳者あとがき」より抜粋)

目次

登場人物

序文

第一章 彼女には言い知れぬ魅力がある 一九〇〇年 ― 一九三五年八月

第二章 古き南部の原稿 一九三五年八月 ― 一九三六年一月

第三章 活字になった原稿 一九三六年二月 ― 三月

第四章 可能性に満ちた本 一九三六年四月 ― 五月

第五章 熱狂を煽る 一九三六年五月 ― 六月

第六章 大成功の狂騒の渦 一九三六年六月 ― 七月

第七章 あの、風の本 一九三六年八月 ― 九月

第八章 名声へのとまどい 一九三六年秋

第九章 風と共に去りぬ社 一九三六年十二月 ― 一九三七年四月

第十章 わが子を守る 一九三七年春 ― 十二月

第十一章 氷山のグリーンランドからインド洋に浮かぶサンゴ礁の小島まで 一九三八年

第十二章 わたしとわたしのスカーレット 一九三九年

第十三章 負いがたき重荷を背負って 一九三九年十二月 ― 一九四二年

第十四章 再建 一九四三年 ― 一九四七年夏

第十五章 青天の霹靂 一九四七年秋 ― 一九四九年八月

第十六章 風を継承する 一九四九年八月 ― 一九五九年

第十七章 スカーレット管理を引き継いで 一九六〇年 ― 一九八三年五月

第十八章 明日はまた明日の続編が出る 一九八三年六月 ― 二〇一一年

エピローグ

謝辞

訳者あとがき

参考文献

原注

索引

著者紹介

エレン・F・ブラウン(ELLEN F. BROWN)

フリーライター.2011 年,ヴァージニア州女性記者協会の年間表彰で最優秀賞を2部門(専門記事,専門ウェブサイト記事)で受賞.趣味は希少本や古書の収集.夫とふたりの息子とともに,ヴァージニア州リッチモンドに暮らす.

ジョン・ワイリー二世(JOHN WILEY JR.)

『風と共に去りぬ』の世界的なコレクター.すべてのアメリカ版と,700 種類以上の外国版を所有.その他 の関連物を合わせると,収集品は1万点以上にのぼる.『風と共に去りぬ』ファンやコレクター向けに,『The Scarlett Letter』(スカーレットの手紙)という季刊のニュースレターを20 年以上発行している.

訳者紹介

近江 美佐(おうみ みさ)

1964 年,兵庫県洲本市(淡路島)生まれ.大阪女学院短期大学英語科,ジョージア州グウィネット・テクニカル・インスティテュート,トラベル・マネジメント学科卒業.一般企業勤務,英語講師を経て,翻訳業に従事.雑誌や電子書籍でエッセイ,コミック,インタビュー記事等の翻訳を手がける.


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