より高度の知識経済化で一層の発展をめざす日本――諸外国への教訓

更新日:2007/10/31

より高度の知識経済化で一層の発展をめざす日本
――諸外国への教訓

柴田勉/竹内弘高 共編

田村勝省 訳

2007年10月 発行

定価 2,500円(+税)

ISBN 978-4-903532-30-1

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・  前付

概要

本書は途上国世界向けに教訓を提供することを念頭に、知識経済としての日本を分析したものである。本書は二
部で構成されている。第一部では、日本が経験し、現在直面している知識問題を取り扱う。第二部ではイノベー
ションや知識創造のブレークスルーを達成した企業を事例を基に詳細に分析する。読者は、各章の著者の鋭い洞
察と分析から、より高度な知識経済に向かうための教訓と示唆を学ぶであろう。

目次

序文

謝辞

日本語版への序文

用語

第I部 評価と教訓

第一章 はじめに  柴田 勉

なぜ日本を研究するのか?

日本経済の発展

本書の構成

補遺

第二章 日本の発展と成長プロセス  宮島 英昭

成長の概観

マクロ経済要因の概観

J型企業の台頭

高度成長期の促進要因

高度成長期における技術移転

エネルギー危機と競争力の優位性

産業競争力のさらなる強化

実物投資から研究開発へ

成長とイノベーションから過剰投資へ

制度的な変化

結論

第三章 日本の産業および企業の競争力  竹内 弘高

成功の源泉

二つの日本

日本政府のアクティビストとしての役割

人的資源と教育

知識経済における政府の役割

ミクロ・レベルの競争力

日本の社内におけるイノベーション

日本のイノベーション:組織をまたいだ結び付き

知識創造プロセス

結論

第四章 高度な知識経済向けの新しい経済的および制度的レジームの要素  早川 達二

事業運営にかかわるデータベース

金融市場

労働力

対外経済政策

政府の役割を再検討する

社会的セーフティネット

結論

第五章 情報インフラ  根津 利三郎

パートA 通信

日本の規制緩和

携帯電話

NTTの分割

インターネットへの接続

ADSLによるブロードバンドの提供

アジアにおけるブロードバンドの急速な普及

インターネットと携帯通信

新しい通信技術

結論

パートB 道に迷う:一九九〇年代における日本のエレクトニクス産業

産業の構造と戦略

アジアの生産者の役割

開放的な革新

技術の入手

ダイナミズムの源である退出と参入

厳しい教訓

結論

第六章 IT革命の日本経済への示唆  元橋 一之

マクロ・レベルでのITと経済成長

産業および企業のレベルで見たITと生産性の関係

組織面の検討

日本型モデルとITユーザーのパフォーマンス

日本企業の長所と短所

IT革命とモジュール化:日本型モデルに対する挑戦

結論

第七章 教育・訓練・人的資源:技能の要請に応える  米澤 彰純/小杉 礼子

教育システムの概観

高等教育

グローバル化がつきつける教育システムの課題

労働市場の変化と教育

教育における政策対応

職業能力

労働市場の変化と技能形成

雇用慣行と知識経済

技能と人的資源の形成にかかわる新しいメカニズム

変化の必要性

結論

第八章 ナショナル・イノベーション・システム:
サイエンス型産業を発展させるための改革  小田切 宏之

初期の工業化

戦後のトレンド

高度成長期における市場競争の役割

政策の役割

大学と政府系研究機関(GRI)の役割

日本のキャッチアップ完了とアメリカの反応

成長の要因の変化

サイエンス型産業を発展させる政策

産学連携

知的財産権に関する改革

ベンチャー企業の促進

R&Dにおける企業の境界

新システムと伝統的慣行の共存

結論

第九章 より高度な知識経済に向かう:教訓と示唆  柴田 勉

経済と制度のレジーム

通信インフラ

ITユーザーとエレクトロニクス

スキルと人的資源

ナショナル・イノベーション・システム(国のイノベーション・システム)

終わりに

第II部 高度な知識創造企業

第十章 知識創造企業の新しいダイナミズム  竹内 弘高

事例研究

知識に対する日本のアプローチ

正当化された信念としての知識

暗黙知の強調

自己組織化チーム

中間管理職の中枢的な役割

外部からの知識獲得

知識変換モード

「場」の概念

結論

第十一章 コンビニエンスストア業界における知識創造:
セブン‐イレブン・ジャパン  野中 郁次郎

概念の枠組み

セブン‐イレブン・ジャパン(SEJ)

「場」と外部ネットワーク

SEJの成功の主要要素

結論

第十二章 学習し自己革新するネットワーク組織:
トヨタとレクサス・ディーラー  大薗 恵美

トヨタとレクサス・ディーラー

ネットワーク組織

社会資本と知識経営

社会資本の特性

レクサスとレクサス・ディーラー

ネットワーク組織としてのトヨタとレクサス・ディーラー

構造的な側面

関係の側面

認知の側面

継続的な改善を越えて

これは移植可能か?

結論

第十三章 知識ベース能力の戦略的マネジメント:シャープ  一條 和生

競争力の優位性を獲得し維持する

シャープのLCD事業戦略

テレビ市場における知識ビジョンと革新

スパイラル的プロセスと「ブラック・ボックス」知識

理論と経営への意義

結論

第十四章 差別化の目に見えない側面:日本のエレクトロニクス企業  楠木 建

デジタル化、モジュール化、コモディティ化

価値次元の可視性とダイナミックス

脱コモディティ化の戦略

コンサルテーション:見えない次元を見る

コンセプト・イノベーション:見えない次元を示す

知識管理への示唆

結論

第十五章 シマノにおける組織間知識の創造  竹内 弘高

シマノ:背景

一つの有機的生命体として見た会社

正当化された信念としての知識

暗黙知の強調

自己組織化チームの中心的な役割

中間管理職の重要性

外部者からの知識獲得

その他の外部資源

知識生態系

シマノにおける知識生態系の特徴

結論

第十六章 模倣が困難なダイナミックスの創造  竹内 弘高

模倣が困難なイノベーション

模倣が困難なイノベーションは暗黙知に基づく

イノベーション・プロセスの再考

イノベーションには多数の参加者が必要である

「場」の種類

「場」の管理

途上国への示唆

結論

参考文献

索引

編者紹介

柴田 勉(しばた つとむ)

1947 年生まれ.
早稲田大学政経学部,イェール大学経済学部大学院(修士)終了.旧日本開発銀行にて融資,
審査,調査,国際協力などに従事,その間,旧海外経済協力基金,世界銀行(東アジア),
国連(アフガニスタン援助)に出向.
1999 年より世銀勤務,現在は世銀研究所シニアーアドヴァイザー.

竹内 弘高(たけうち ひろたか)

1946 年東京生まれ.
国際基督教大学卒業,1971 年カリフォルニア大学バークレー校にてMBA,1977 年同校
にて博士号を取得.1976 年から1983 年までハーバード・ビジネス・スクール助教授.
1983 年より一橋大学商学部准教授.1998 年より同大学院国際企業戦略研究科 研究科長.

主な著書
『ベスト・プラクティス革命』(ダイヤモンド社,1994),『知識創造企業(共著)』(東洋
経済新報社, 1996),『日本の競争戦略(共著)』(ダイヤモンド社, 2000)などがある.野
中郁次郎氏と書いた『The Knowledge-Creating Company』(『知識創造企業』原著)は
1995 年度の全米出版協会のベスト・ブック・オブ・ザ・イヤー賞(経営分野)を受賞.

訳者紹介

田村 勝省(たむら かつよし)

1949 年生まれ.
東京外国語大学・東京都立大学卒業.旧東京銀行で調査部・ロンドン支店・ニューヨー
ク支店などを経て,現在は関東学園大学教授・翻訳家.主な訳書に『グーテンベルクの
時代』(原書房,2006 年),『世界開発報告2007』(一灯舎,2007 年),『ドルはどこへ行
くのか?』(春秋社,2007 年)などがある.

*訳者は最初の原稿を作成した.各章の著者はそれぞれ推敲を行ったが,その用語の統
一などは一灯舎が編者などと調整したうえまとめた.世界銀行は訳に責任をおうもので
はない.


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