転換を迫られるインドのイノベーション政策

更新日:2008/06/30

転換を迫られるインドのイノベーション政策

持続的成長のための課題

Mark A. Dutz 編

村上 美智子 訳

2008年6月 発行

定価 2,310円(税込)

ISBN 978-4-903532-36-3

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・  要約、目次

概要

 インドの最近の成長率は印象的である。2004年以降、実質GDP成長率は毎年8%を上回っている。同国はまたハイテク製品やサービスで世界トップのイノベーターになりつつある。しかし、インドはそのイノベーションの潜在力を発揮しているとはいえない。ダイナミックな青年層――その半分以上は25歳未満であるが――でさえ、技術訓練や高等教育が不十分な時には制約を受ける。競争力、経済成長、そして長期にわたる生活水準の向上を維持するために、インドはそのイノベーションの潜在力を積極的に活用する必要がある。

 イノベーションという用語を本書では、「新しい知識の創造・商業化」と「既存知識の普及・吸収」の両方を含むように新しい文脈で幅広く定義している。本書のユニークな特徴はこのような包括的イノベーションに焦点を当てていることである。それは、貧困者のニーズに最も深く関わる知識の創造や吸収の活動である。競争という規律を働かせることを通じて生産性を高め繁栄を拡大するために、具体的な勧告が提言されており、それには訓練や教育、情報インフラ、そして広範な基礎を持つイノベーションの支援メカニズムとしての官民ファイナンスが含まれている。

 本書は、国や地方の政策策定者、民間セクター企業、学究機関や研究機関、国際組織、市民社会に、経済成長や貧困削減を促進するイノベーションの力についてより良い理解を提供しよう。

目次

謝辞

略語一覧

要約

概観 イノベーションの行動アジェンダに向けて  Mark A. Dutz

インドの情況と機能的環境

知識の創造と商業化

知識の普及や吸収

包括的イノベーションの推進

イノベーションのためのスキルと教育の強化

情報インフラの拡充

イノベーション・ファイナンスの拡充

第一章 インドの情況と機能的環境  Mark A. Dutz, Carl Dahlman

インド経済の構造的特徴

広範な基礎を持つイノベーションと生産性

イノベーションのための機能的環境

第二章 知識の創造と商業化  Carl Dahlman, Mark A. Dutz, and Vinod K. Goel

民間R&D の取り組みの拡大

公的R&D の効果の向上

知識の商業化の強化

第三章 知識の普及と吸収  Vinod K. Goel, Carl Dahlman, and Mark A. Dutz

国際的な知識の流入拡大を促す

度量衡,標準,試験及び品質サービスの普及や吸収の改善

中小零細企業の吸収能力の強化

第四章 包括的イノベーションの推進  Anuja Utz and Carl Dahlman

フォーマル・セクターの貧困層のための創造的取り組みを活用

草の根イノベーションの推進と普及

インフォーマル・セクターがいっそう良く知識を吸収できるように支援すること

第五章 イノベーションのためのスキルと教育の強化

フォーマル・セクターとインフォーマル・セクターでの基礎的スキルの向上

よりスキルのある労働力の拡大:企業ベースの訓練と職業教育

技術者と研究者のスキルの強化:市場に関連するスキルの高等教育への移転

第六章 情報インフラの高度化  Shanthi Divakaran, Anil Srivastava, and Mark Williams

ICT インフラへのアクセスの改善

大学や高度研究機関のICT インフラの開発

第七章 イノベーション・ファイナンスの強化  Inderbir Singh Dhingra

アーリーステージの技術開発への金融支援

アーリーステージのベンチャーキャピタル

中小企業による技術の吸収のファイナンス

技術的付録

索 引

編者紹介

Mark A. Dutz

プリンストン大学経済博士号取得.トルコ経済相上級顧問,欧州復興開発銀行チーフエコノミ
スト室勤務,OECD 競争局及びWTO のコンサルタント等を経て,現職は世界銀行南アジア金融・
民間セクター開発ユニット,シニアエコノミスト.

訳者紹介

村上 美智子(むらかみ みちこ)

東京大学文学部卒業.旧東京銀行,富士通総研経済研究所,国際協力銀行を経て,現在は(財)
海外投融資情報財団.


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